データは、あなたのものです。
この記事のポイント
- 個人を特定する情報(氏名・連絡先・請求情報)と、身体のデータ(食事・運動・生体記録)は、はじめから別々のデータベースに置き、匿名の符号だけで参照し合う構造にしています。機微な情報が入るヘルスケアデータが万が一漏れたとしても、それが「誰の」データかはわかりません。
- データの処理・保管は、日本国内(東京リージョン)を原則にしています。AIの分析に渡すのも、個人を特定できる情報ではなく、匿名化した傾向データだけです。
- 基盤は自前で作り込むのではなく、第三者認証を受けた実績あるクラウド事業者に委ねる設計。そして、あなたのデータは、いつでもあなた自身が取り出し、消せるようにします。
前回のおさらい
前回「点数は、つけません」で、私たちが「今日は72点」のような点数をあえて出さない理由について書きました。そしてその最後に、こう予告しました。データはあなたのもの、という、当たり前でかつ一番重要な話を書きます、と。
今回は、その話です。
鏡は、映すだけでは足りない
meiseki OS は、あなたの食事・運動・睡眠・生体データを一つにまとめ、あなた自身に映し返す「鏡」だと、この連載で繰り返し書いてきました。
ただ、鏡というものは、映すためには、まずそこに立ってもらう必要があります。そして、健康データほど個人的なものはありません。何を食べ、いつ眠れず、心拍がどう動いたか。これらを預けてもらうということは、私たちにとって、機能をひとつ追加すること以上の意味を持ちます。
だから今回は、私たちがそのデータを、実際にどう扱っているかを書きます。
個人を特定する情報と、身体のデータを、はじめから分けている
meiseki OS の裏側には、性質の異なる2つのデータベースがあります。一つは、氏名・連絡先・請求情報といった、あなたを特定するための情報。もう一つは、食事・運動・生体データといった、あなたの身体の記録です。
この2つは、はじめから物理的に別のデータベースに置いています。そして、互いを直接結びつける項目(氏名など)は持たせず、匿名の符号(UUID)だけで参照し合う構造にしています。機微な情報が入るヘルスケアデータの側が万が一漏れたとしても、個人を特定する情報とは分離されているため、それが「誰の」データかはわかりません。
分けておくことは、後から直すより、はじめに選ぶものです。
処理は、日本国内を原則に
データの処理・保管の拠点は、東京リージョンを原則にしています。あなたの記録を扱うアプリケーションも、身体データを預かるデータベースも、東京で動く基盤の上に置いています。
決済やメール配信のように、性質上どうしても海外の事業者を介するものもあります。ここは隠さず書きます。すべてを国内だけで完結させることは、現実的には難しい部分がある、ということです。ただし、あなたの身体データそのものと、AIによる分析処理は、日本国内で完結する設計を軸にしています。取り扱いの詳しい区分は、正式にはプライバシーポリシーに定めます。
AIに渡すのは、"あなたが誰か"ではなく、"傾向"だけ
meiseki OS は、あなたのデータをAIに読ませて、コメントを生成する場面があります。ここで渡しているのは、氏名やメールアドレスのような、あなたを特定する情報ではありません。「先週より睡眠が浅い」「タンパク質の摂取が少ない日が続いている」といった、数値の傾向やパターンだけを取り出した"事実データ"です。
加えて、採用しているAIサービス自体も、入力されたデータをモデルの学習には使わない設定のものに限定しています。私たちが利用するGoogle GeminiやAzure OpenAIは、いずれも「入力されたデータをモデルの学習には使わない」と公式に明言しているサービスです。Google Geminiは「プロンプトも応答も、モデルの学習データとしては使用しない」としており[4]、Azure OpenAIも「顧客データを使ってモデルを再学習することはない」としています[5]。あなたが入力した記録が、見知らぬ誰かへの回答に紛れ込むことはありません。
土台は、実績のある専門家に委ねる
私たちは、サーバーを自前で組んで運用するのではなく、インフラの土台を、第三者機関の審査を通過した実績あるクラウド事業者に委ねる設計を選んでいます。
アプリケーションの基盤に使っているLaravel Cloudは、SOC 2 Type 2の認証を取得済みです[1]。身体データを預けるSupabaseも、SOC 2 Type IIおよびHIPAA相当の認証を取得しています[2]。通信の窓口となるCloudflareも、SOC 2やISO 27001など、複数の第三者認証を長年維持しています[3]。
もちろん、これらの認証があるからといって、リスクがゼロになるわけではありません。絶対に安全と言い切れるシステムは、どこにもありません。ただ、限られたチームがゼロからセキュリティを設計・運用するより、日々世界中の攻撃にさらされながら実績を積んできた専門家の基盤に土台を任せるほうが、現実的に手堅い。これが、私たちの判断です。
いつでも、取り出せて、消せる
データはあなたのもの、というのは、私たちにとって比喩ではありません。あなたの記録は、いつでもあなた自身が取り出し、消せる状態にしておく。これを、設計の前提にしています。
人の手による「消し忘れ」に頼るのではなく、仕組みとして自動的に消える設計を、はじめから組み込んでいく方針です。データそのものは、私たちにとって資産ではなく、預かりものだからです。
映すために預かる。手放したくなったら、いつでも手放せる。
鏡は、映すだけでなく、守る
点数をつけない理由は、あなたが自分の感覚を手放さずにいられるようにするためでした。データを厳重に扱う理由も、根っこは同じです。
データはあなたのもの。OS は、それを映すだけです。だからこそ、OS の上でも、そのデータはあなたのものであり続けるようにする。それが、私たちがここまで書いてきた設計のすべてに通じている、いちばん基本的な約束です。
頭の働きは、身体のコンディションと切り離せません。meiseki OS は、知的プロフェッショナルの日々のコンディション管理(体調管理・コンディショニング)のための仕組みで、疲労・情報過多・体調のノイズに判断を曇らされず、自分の状態を正しく踏まえて決められる状態を「明晰な意思決定」と呼んでいます。散在する生体・栄養・運動・主観データの統合と計算をシステムが裏側で肩代わりし、整えた身体を土台に、有限な思考エネルギーを判断そのものに残す。そのための「静かな鏡」として、meiseki OS(HLG Dynamics)は設計されています。
終わりに
データを厳重に扱うのは、あなたを不安にさせないためではありません。安心して預けてもらえるからこそ、鏡は、あなたの姿をありのまま映せるようになる。私たちはそう考えています。
参考文献
- Laravel Cloud はSOC 2 Type 2(Security・Confidentiality・Availability)を取得済み:Laravel Cloud — Compliance & Security
- Supabase はSOC 2 Type IIおよびHIPAA相当の認証を取得済み:Supabase — Supabase is now HIPAA and SOC2 Type 2 compliant
- Cloudflare の第三者認証(SOC 2・ISO 27001 等)一覧:Cloudflare Trust Hub
- Google Gemini の公式データガバナンス方針(「プロンプトも応答もモデル学習に使用しない」):Google Cloud — How Gemini uses your data
- Azure OpenAI の公式FAQ(「顧客データはモデルの再学習に使用しない」):Microsoft Learn — Azure OpenAI Service FAQ